PRを投げてから、CIのステータスページをF5で連打した経験があるか。2026年2月20日のAnthropic発表から、その作業をClaudeに丸投げできる。
ツール切り替えが「摩擦」になる理由
コードを書く。エディタで変更を確認する。ターミナルで git push。ブラウザを開いてGitHubにアクセスしてPRを作成する。CIが通るまで待つ。失敗したらターミナルに戻って修正、また git push、またブラウザで確認……。
この作業フローを工場の作業台で例えると、一つの製品を完成させるために組み立て台A(エディタ)→検品台B(ブラウザ)→発送台C(ターミナル)→審査室D(GitHub)→待合室E(CIの結果待ち)と、常に別の部屋を歩き回っている状態だ。製品を作る時間より、部屋を移動する時間の方が長くなる。
Claude Code Desktopは、この全工程を一つの作業台にまとめることを目指している。2026年2月20日のアップデートで追加された4つの機能を順番に見ていく。
2026年2月20日のDesktopアップデート:4つの機能
今回追加された機能は以下の4つだ。
- App Preview:デスクトップ内の埋め込みブラウザでdevサーバーを確認
- Code Review:diffビューでインラインコードレビュー
- PR Monitoring & Auto-merge:CIの監視と自動マージ
- Session Continuity:CLIとDesktopのシームレスな移動

App Preview:ブラウザを開かずに「動くか確認」する
従来の開発フローでは、コードを変更するたびにブラウザに切り替えてページをリロードする必要があった。App Preview機能は、この確認作業をデスクトップアプリ内で完結させる。Claudeがdevサーバーを自動で起動し、その結果をデスクトップ内の埋め込みブラウザに表示する。
さらに重要なのは、自動検証(auto-verify)がデフォルトで有効になっている点だ。コードを変更するたびに、Claudeが自動でスクリーンショットを撮影し、DOMを検査し、要素をクリックし、フォームに入力して、変更が正しく動作しているかを確認してから作業を完了とする。人間がブラウザを開いて確認する作業を、Claudeが自律的にこなす。
devサーバーの設定は .claude/launch.json に記述する。Claudeが最初にプロジェクトを解析して自動生成するが、カスタマイズが必要な場合は手動で編集できる。
❌ auto-verifyを無効化した設定(変更後の自動確認が走らなくなる):
{
"version": "0.0.1",
"autoVerify": false,
"configurations": [
{
"name": "frontend",
"runtimeExecutable": "npm",
"runtimeArgs": ["run", "dev"],
"port": 3000
}
]
}
✅ フロントエンドとAPIサーバーを同時に起動する設定(本番に近い構成で確認できる):
{
"version": "0.0.1",
"configurations": [
{
"name": "frontend",
"runtimeExecutable": "npm",
"runtimeArgs": ["run", "dev"],
"cwd": "apps/web",
"port": 3000,
"autoPort": true
},
{
"name": "api",
"runtimeExecutable": "npm",
"runtimeArgs": ["run", "start"],
"cwd": "server",
"port": 8080,
"env": { "NODE_ENV": "development" },
"autoPort": false
}
]
}
cwd フィールドでサブディレクトリを指定でき、env で環境変数を渡せる。autoPort: true はポートが使用中の場合に空きポートを自動で探す。autoPort: false はOAuthコールバックやCORSの設定で特定ポートが必要な場合に使う。
.claude/launch.json の env フィールドにシークレットを書かないこと。このファイルはリポジトリにコミットされるため、APIキーなどの機密情報は必ずシェルプロファイル(.zshrc など)で設定する。シェルで設定した環境変数はDesktopアプリに自動で引き継がれる。
設定フィールドの詳細は公式ドキュメントに網羅的にまとまっている。
Code Review:「Review code」ボタンで何が変わるか
コードに変更を加えると、画面にdiffビューが表示される。変更ファイルの一覧と各ファイルの差分を確認できる。このdiffビューの右上に「Review code」ボタンが追加された。
クリックすると、Claudeが現在のdiffを分析してインラインコメントを直接差分に書き込む。PRを出す前に、ローカルでコードレビューを受けられる。コメントへの返信もでき、Claudeが修正を加えた新しいdiffとして反映される。
公式ドキュメントによると、このレビューが重点を置く問題は明確に定義されている。
- コンパイルエラー
- 明確なロジックバグ
- セキュリティ脆弱性
- 明らかなバグ
逆に、このレビューが対象にしないのはスタイル、フォーマット、既存の問題、リンターで検出できる問題だ。「スペースをタブに変えてください」という指摘はしない。BiomeやOxlintでやることはやってもらって、Claudeは「ロジックが正しいか」「セキュリティホールがないか」に集中する設計だ。
PRを出してからレビュワーの返信を待つのではなく、出す前にこのループを回せるのが大きな違いだ。
PR Monitoring & Auto-merge:CI待ちを「次のタスク」に充てる
PRを作成した後、CIが通るまで待つ時間がある。Claude Code Desktopはこの時間を「ClaudeがCI監視をやる時間」に変える。
PRを作成すると、セッション画面にCIステータスバーが表示される。GitHub CLI(gh)を使ってCIの結果を定期的に確認し、失敗した場合はその詳細をDesktopに表示する。
CIステータスバーには2つのトグルがある。
Auto-fixを有効にすると、CIが失敗した際にClaudeが自動でその原因を読んで修正を試みる。テストが落ちた場合も、エラーログを分析してコードを直してpushし直す。
Auto-mergeを有効にすると、全CIチェックが通った時点でClaudeがPRを自動でマージする。「PRを投げたら次のタスクへ。気づいたらマージ済み」というワークフローが実現する。CIが完了した時点でデスクトップ通知も届く。
ただし、Auto-mergeにはいくつか前提条件がある。
まず、GitHub CLI(gh)のインストールと認証が必要だ。PRを初めて作成しようとした際にDesktopが案内してくれる。次に、GitHubリポジトリの設定でauto-mergeを有効化しておく必要がある(GitHubの設定方法)。
前提条件を確認するコマンドは以下だ:
# GitHub CLIのインストール確認
gh --version
# GitHub CLIの認証確認
gh auth status
# リポジトリのauto-merge設定確認
gh repo view --json autoMergeAllowed
# "autoMergeAllowed": true であればDesktopでAuto-mergeが使用可能
マージ方式はsquashのみだ。merge commitやrebaseには対応していない。squashで一つにまとめることを前提としたワークフロー設計になっている。また、GitHubリポジトリ側で「Allow auto-merge」が有効になっていない場合、DesktopのトグルをONにしても動作しない。PRを作成する前に確認しておくこと。
Session Continuity:CLIとDesktopをシームレスに移動する
CLIのターミナルでClaudeと作業しているとき、途中でDesktopのGUI(diffビューやApp Preview)を使いたくなることがある。/desktop コマンドはその橋渡しをする。
ターミナルで進行中のセッションで /desktop と入力すると、そのセッションの全コンテキストがDesktopアプリに引き継がれ、CLIは終了する。引き継ぎノートを渡すような感覚で、会話の文脈が完全に保たれたまま画面が切り替わる。
# ターミナルでClaudeと作業中...
claude> 認証フォームのバリデーションを修正して
# (Claudeが作業を進める)
# GUIのdiffビューやApp Previewで確認したくなったら:
> /desktop
# → セッションがDesktopアプリに移行し、CLIは終了する
逆方向の移動もできる。Desktopのセッションツールバーにある「Continue with Claude Code on the web」ボタンから、作業中のセッションをクラウドに移動できる。ローカルのブランチがpushされ、会話の要約が作成されて、クラウド上で新しいリモートセッションとして続きから作業できる。そのセッションはclaude.ai/codeやiOSのClaudeアプリからも確認・操作できる。
CLIからDesktopへの移動(/desktopコマンド)は、現在macOSとWindowsのみ対応している。Linuxでは使えない。また、クラウドへの移行にはクリーンなworking tree(コミットされていない変更がない状態)が必要だ。
詳細は公式ドキュメントを参照してほしい。
Desktop vs CLIの使い分け
Claude Code DesktopとCLIは同じエンジンで動いており、同じマシンで同時に使うことができる。CLAUDE.mdや設定ファイルは共有される。どちらを使うかは「今の作業でどちらが向いているか」で選べばいい。
公式ドキュメントのCLI比較表にも詳しくまとまっている。
制限事項と注意点
今回のアップデートで多くのことができるようになったが、制限事項も明確に存在する。
DesktopアプリはmacOSとWindowsのみ対応だ。Linux環境では使えない。
サードパーティプロバイダー(Amazon Bedrock、Google Vertex AI)はDesktopでは使えない。AnthropicのAPIに直接接続する設計のため、BedrockやVertex経由で使いたい場合はCLIを使う必要がある。
エージェントチーム(複数エージェントの並行実行)はDesktopには対応していない。CLIとAgent SDKのみで利用できる。この機能についてはエージェントチームの解説記事を参照してほしい。
インラインコード補完(Cursorのようなタブ補完)もDesktopでは提供されていない。Desktopは対話型プロンプトと明示的なコード変更を基本とした設計だ。
「摩擦がどこにあるか」で決める
ツールを選ぶ基準は単純だ。今の開発フローで一番面倒な部分がどこかを考える。
CIの結果を待ちながら他のことができていないなら、Auto-fix・Auto-mergeを試す価値がある。ブラウザとエディタを行き来しながらUIを確認しているなら、App Previewが使えるDesktopを試す。CLIで作業中にdiffの視覚的確認がしたくなるなら、/desktop コマンドで移動する。
コーディングの本質は問題を解決することであって、ツールの切り替えに時間を使うことではない。Claude Code Desktopが目指しているのは、「部屋の移動」に使う時間を減らして、コードを書く時間を増やすことだ。
