テキストを送ったら3分でアプリが動いた。でも翌日、動かなくなった——これは特定の誰かの話ではない。Lovable、Bolt.new、v0を使い始めた人の多くが、同じ場所でつまずいている。
この記事ではその3つのツールを正直に比較する。機能説明はほどほどに、「どこで詰まるか」「本当のコストはいくらか」「どのツールを選べばいいか」を中心に伝える。プログラミング経験がなくても読める。
3つのツールの「立ち位置」を整理する
まず混乱を避けるために、各ツールが何を目指しているかを整理しておく。
| 比較軸 | Bolt.new | Lovable | v0 |
|---|---|---|---|
| 想定ユーザー | 開発者よりの人 | 非エンジニア創業者 | デザイナー/開発者 |
| UIの品質 | 中程度(フレームワーク不固定) | 高品質(shadcn/ui) | 最高品質(React/Tailwind) |
| バックエンド統合 | 自分でSupabase等を繋ぐ | Supabase深い統合(RLS自動設定) | Supabase/Neon対応(新機能) |
| フレームワーク | React/Vue/Svelte等多数 | React + Supabase固定 | Next.js/React/TypeScript固定 |
| コストの予測しやすさ | 低い(トークン爆発あり) | 中程度(クレジット消費は速い) | 中程度(2025年5月以降は注意) |
| サポート品質 | 非常に低い | 良好 | 良好(Vercel) |
3つとも「テキストを書けばアプリができる」ツールだ。でも得意な場面が違う。これを知らずに選ぶと、後で後悔することになる。
Lovable——デザインファーストの「全部入り」
Lovableは2025年1月に正式公開されたAI開発ツールだ。UIデザインに力が入っており、プロンプトを入力するだけでFigmaで作ったようなモックアップが出てくる。バックエンドはSupabaseに自動接続され、認証・データベース・ストレージまでまとめてセットアップされる。
Lovableが他の2ツールと差別化できている点は「非エンジニア向けの丁寧さ」だ。RLS(Row Level Security:データベースのアクセス制御)を自動で設定してくれる機能は、セキュリティの知識がなくても安全なアプリを作れるよう設計されている。GitHubへのエクスポートも標準でサポートされており、Lovableで作った後にCursorやClaude Codeで続きを作るというワークフローも成立する。
Lovableの料金(2026年2月時点)
公式料金ページによると以下のとおり:
| プラン | 月額 | クレジット数 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 5クレジット/日(最大150/月) |
| Pro | $25/月 | 月100+5/日(最大150/月) |
| Business | $50/月 | 月100クレジット+SSO・チームワークスペース |
| Enterprise | カスタム | カスタム |
Proプランの$25という数字だけ見ると安く感じる。だがこれは「Lovableを使う料金」であって「アプリを動かし続ける料金」ではない。本当のコストについては後述する。
Lovableが詰まるポイント
Lovableは最初の70%が速い。見た目が動く状態まではほぼ詰まらない。問題は残りの30%——認証、複雑なフォームバリデーション、決済フローあたりだ。
G2のユーザーレビューには「サインアップ/サインイン実装に何度チャットしても正しく動かない」という声が複数ある。「AIが直前に直したコードを次のチャットで壊す」という報告も珍しくない。複雑な要件になるほど、ループが長くなり、クレジットが消える。
Bolt.new——コードが見える「速さ重視」
Bolt.newはStackBlitzが作ったツールだ。技術的に面白いのは「WebContainers」という仕組みを使っている点だ。
WebContainersとは、WebAssemblyを使ってブラウザの中でNode.js環境を完全に実行する技術だ。ローカルにNode.jsをインストールしなくても、ブラウザ上でnpm install、開発サーバー起動、APIルート実行が全部できる。AIエージェントがファイルシステム、パッケージマネージャー、ターミナル、ブラウザコンソールすべてにアクセスしながら作業するため、コードが見える状態での開発ができる。
対応フレームワークはReact、Vue、Svelteなど多数。Lovableと違って技術スタックが固定されていないため、自由度は高い。その分、「どのスタックで作るか」自分で判断できない人には向かない。
Bolt.newの料金(2026年2月時点)
公式料金ページによると:
| プラン | 月額 | トークン数 |
|---|---|---|
| Free | $0 | 100万/月(1日30万キャップ) |
| Pro | $25/月 | 1,000万以上(日次キャップなし、未使用分は翌月繰り越し) |
| Teams | $30/メンバー/月 | 1,000万以上/メンバー+チーム管理機能 |
| Enterprise | カスタム | カスタム |
トークンが「溶ける」問題
Bolt.newで最も報告が多いのが、トークンの消費速度だ。
中規模プロジェクト1プロンプトで15万〜50万トークンを消費する。Freeプランの1日30万キャップは、実質「1〜2プロンプト打ったら終わり」に近い。Proプランの1,000万トークンも、バグ修正のループに入ると驚くほど速く消える。
trickle.soのBolt.newレビューでは実際の事例として「Supabase認証1件のバグを修正しようと3回試行したら300〜500万トークン消費した」という報告が紹介されている。これはProプランの月割当の3割から5割に相当する。
デバッグループに入るのは夏の炎天下にアイスを持って歩くようなものだ。始めた瞬間から溶け始めて、気づいたときには何も残っていない。
Trustpilotの評価
BoltのTrustpilot評価は5点満点中1.4点(レビュー多数)。85%が1つ星だ。主な不満はカスタマーサポートがボット応答のみで機能しない、課金キャンセル後も請求が続く、トークン残高が突然消える——といったものだ。
これはツールの開発品質とは別の問題だが、課金やサポートのトラブルが多い点は知っておくべきだ。
v0——UIは最高品質、でもフルスタックには荷が重い
v0はVercelが作るUIジェネレーターだ。2025年8月にv0.dev からv0.appへリブランドし、「開発者以外にも」という方向を明示した。
UIの完成度は3ツールの中で最高だ。React、TypeScript、Tailwind CSS、shadcn/uiの組み合わせで、コピーしてそのまま使えるコードが出てくる。この点はプロのフロントエンドエンジニアでも「そのまま使える」と評価する品質だ。
2025年8月のアップデートで追加されたのは:
- エージェンティックAIモード(自律的に計画・実行)
- Supabase/Neonのバックエンド統合
- iOSアプリ
- 3つのモデル選択肢(MiniはClaude Haiku相当、ProはSonnet相当、MaxはOpus相当)
ユーザー数は2025年9月時点で350万人を超えた。
v0の料金(2026年2月時点)
公式料金ページによると:
| プラン | 月額 | クレジット |
|---|---|---|
| Free | $0 | $5相当+1日ログインボーナス$2 |
| Premium | $20/月 | $20+毎日$2 |
| Team | $30/ユーザー/月 | $30/ユーザー+毎日$2 |
| Business | $100/ユーザー/月 | 同上+トレーニングオプトアウト |
注意点として、Vercelの発表によれば2025年5月13日にメッセージ数課金からトークン従量課金へ移行した。AIが自分のエラーを修正する際も課金されるため、デバッグループに入るとコストが予測しにくくなった。コミュニティでもこの変更への反発があった。
v0は非エンジニアに向くか
UIデモやコンポーネントの生成なら最高のツールだ。「ここからフルスタックアプリを作り上げる」には、2025年8月のアップデートでバックエンド統合は追加されたが、LovableやReplit Agentほどの「自動化の深さ」はまだない。「ReactのUIを作る」か「デザインを検討するプロトタイプを作る」目的なら選んで間違いない。フルスタックアプリを作りたい非エンジニアには、まずLovableを試した方がいい。
「70%の壁」——3ツールが共通して失速する地点
3ツールに共通する限界がある。freeacademy.aiの比較記事やuibakery.ioの分析でも指摘されている「テクニカルクリフ」だ。
最初の70%——見た目が動く状態——は砂地を歩くように速く進める。残り30%——認証、データバリデーション、決済フロー、本番インフラ——はコンクリートの壁だ。「さっきまでこんなに速く進んだのに、なぜここで止まるのか」と感じる非エンジニアが多い。答えは単純で、最初の70%は「見た目を組み合わせる仕事」で、残り30%は「システムの信頼性を作る仕事」だからだ。難しさの種類が違う。
認証が鬼門
認証(ログイン・サインアップ機能)は、どのツールでも詰まりやすい筆頭だ。
eesel.aiのLovableレビューでは「認証周りのバグを修正しようとAIとチャットするほど、別の場所が壊れる連鎖が起きた」という報告が複数ある。Bolt.newでは前述のように認証1件のバグで数百万トークンが消えた事例がある。
なぜ認証が難しいか。認証はフロントエンドとバックエンドとデータベースが連携する仕組みだ。どれか1つが少しずれると動かない。しかも「動いた」と思った後に「セキュリティホールがある」という問題が残ることも多い。
デバッグループでクレジットが蒸発する
AIに「直して」と頼む→動かない→また「直して」と頼む——このループに入ると、ツールに関係なくクレジット/トークンが蒸発していく。
問題なのは「AIが直前に直したコードを次のプロンプトで壊す」というパターンだ。こうなると前進しているように見えて、実際は同じ場所をぐるぐる回っている。このループから抜け出すには、AIに頼み続けるのではなく「何が起きているか」を自分で理解する必要が出てくる。そこがバイブコーディングの天井だ。
本番公開後に待つコスト
「$25のプラン」は入口の価格だ。アプリを本番で動かし続けるには別のコストが乗ってくる。
Lovable Proで作ったアプリを本番公開した場合の試算(eesel.aiの調査による):
Lovable Pro: $25/月
Vercel Pro(商用利用必須): $20/月
Supabase Pro: $25/月(アクセスが増えたら)
カスタムドメイン: $15/月
追加クレジット購入: $40〜/月(月後半に必要になりがち)
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合計: $125〜/月
「$25のプランで使える」は入口の価格。実際に動かし続けるには5倍以上になる可能性がある。これはLovableの問題ではなく「Webアプリを本番運用するにはインフラコストがかかる」という事実だが、ツールの料金ページには書かれていない。
どれを選べばいいか
具体的に言うと:
- 「ReactのUIコンポーネントが欲しい」「デザインを確認したい」 → v0
- 「プログラミングは分からないが、ログイン付きのWebアプリを作りたい」 → Lovable
- 「フレームワークの知識はある。コードを見ながら作りたい」 → Bolt.new
- 「バックエンドAPIや自動化スクリプトを作りたい」 → Replit Agent
どのツールも「プロトタイプを数分で作る」ことは得意だ。「プロトタイプを本番サービスに育てる」ことは、どのツールでも壁がある。
プロンプトの書き方で差が出る
3ツール共通で、プロンプトの精度が結果に直結する。
❌ 悪いプロンプト(どのツールでもうまくいかない)
「タスク管理アプリを作って」
これだけだとAIは想像で補完する。UIの構成、データの持ち方、認証の有無、すべてがAIの解釈次第になる。直したいと思った瞬間に「AIが想定していたもの」と「自分が欲しかったもの」のズレが爆発する。
✅ Lovable向きの具体的なプロンプト
タスク管理アプリを作って。
- ユーザー認証(メール+パスワード)
- ログインしたユーザーが自分のタスクだけ作成・完了・削除できる
- Supabaseで保存。RLS有効にして他のユーザーのデータは見えないようにする
- UIはシンプルなダークモード。優先度は高/中/低で色分け
✅ Bolt.new向きの具体的なプロンプト
React + TypeScriptでタスク管理アプリを作って。
- バックエンドはSupabase(テーブル構成も作って)
- 認証はSupabase Auth(メール/パスワード)
- RLS必須: ユーザーは自分のタスクだけ読み書きできる
- UIはTailwind CSSでシンプルなダークモード
要件を具体的に書くほど、AIの解釈の余地が減り、想定外の動きが起きにくくなる。特に認証とデータの持ち方は最初から書いておくこと。後から追加すると壊れやすい。
「作って終わり」にしないために
3ツールはプロトタイプを作るのに最適だ。でもプロトタイプは「動く」だけでは終わらない。
人に使ってもらうには:
- 本番環境へのデプロイ(Vercel等)
- ドメインの取得と設定
- データベースのバックアップ設定
- エラー監視の仕組み
- セキュリティの確認(特にRLSと認証周り)
このサイトのセキュリティ記事でも書いているが、AIは「動くもの」を作るが「安全なもの」は自動では作らない。Lovableは3ツールの中で最もセキュリティ配慮が手厚いが、それでも「AIが設定してくれたから大丈夫」と思い込むのは危険だ。
3ツールとも「補助輪付き自転車」だ。最初は安全に乗れる。本番環境で安定して走り続けるには、補助輪を外すタイミングを知る必要がある。「どこで詰まるか」「何が自動でできて何が自動でできないか」を理解した上で使うと、ツールの価値を最大限に引き出せる。
3ツールは否定しない。非エンジニアが「自分にも作れる」と知るための入口として、圧倒的に優れている。その先に何があるかを知った上で使えば、挫折する確率は大きく下がる。